キャンプが人気ですが、「キャンプインストラクター」という資格があるのをご存じですか。
「キャンプインストラクターはいらないのでは?」と疑問に思う方も多いかもしれません。確かに、キャンプをするだけなら資格は不要です。ですが、もし仕事にしたい、または指導する立場になるならどうでしょう。
この記事では、資格取得のメリットやデメリット、具体的な取得方法、気になる費用や試験の合格率、そして年会費や資格の活かし方まで、詳しく掘り下げていきます。
- 趣味でキャンプを楽しむだけなら資格は不要
- 資格は教育系(NCA)とレジャー系(JAC)の2種類
- 費用は約3万円、オンラインや1泊2日の講習で取得可能
- メリットは賠償責任保険、デメリットは年会費
なぜキャンプインストラクターはいらない?

- キャンプインストラクターの資格とは
- 資格の取得方法と講習内容
- 取得にかかる費用はいくら
- 試験の難易度と内容
- 合格率はどのくらい
キャンプインストラクターの資格とは
キャンプインストラクターとは、キャンパー個人やグループに対して、キャンプのプログラム指導などを行う役割を担うことができる指導者として認められた資格です。
キャンプブームに伴い、この資格の存在を知る人も増えましたが、同時に「キャンプをするのに資格は必要なのか?」という疑問も生まれています。
結論から言えば、趣味として自分でキャンプを楽しむだけなら、資格は必要ありません。
アウトドアに関わる資格は、登山やバーベキューなど様々な協会が認定するものが存在します。これらの資格は、有していないとキャンプができないといったものではなく、あくまでも専門性の高い知識と技術力を学び、その人が持つスキルを可視化するために存在すると考えられます。
キャンプインストラクターの資格も同様で、キャンプの指導に関する専門知識を学ぶためのものです。
2種類のキャンプ指導者資格
キャンプに関わる指導者資格として、主に知られているのは2種類あります。
ひとつは、公益社団法人日本キャンプ協会(NCA)が認定する「キャンプインストラクター」。
もうひとつは、一般社団法人日本オートキャンプ協会(JAC)が認定する「公認オートキャンプ指導者」です。
どちらもキャンプにおける基本スキルの学習と、指導できる知識を得ることを目的とした資格になりますが、その成り立ちや目指す方向性が少し異なります。
教育(NCA)とレジャー(JAC)の違い
2つの資格は、学ぶ内容や目的に微妙な違いがあります。
キャンプインストラクター(日本キャンプ協会)
日本キャンプ協会は1966年に設立され、主に野外活動としてのキャンプ普及を目的としています。資格内容は文部科学省の影響を受けており、キャンプやアウトドア活動を教育的な側面から捉え、子どもの育成や未経験者への指導ができる人材育成に重きを置いています。
そのため、講習内容も登山を含む野外活動スキルや安全教育が中心です。受験者には学校教育に携わる人が多く、提携キャンプ場も公営が多い傾向があります。上位資格として「キャンプディレクター1級・2級」が設定されています。
公認オートキャンプ指導者(日本オートキャンプ協会)
日本オートキャンプ協会は1969年に設立され、主にレジャーとしてのキャンプ普及を目的としています。資格内容は民間企業の影響を受けており、オートキャンプと観光を結びつけたレジャー面から捉え、キャンプ場経営や未経験者への指導ができる人材育成を目指しています。
講習内容はオートキャンプに関わるスキルや安全教育が中心で、受験者にはキャンプ場関係者が多いのが特徴です。
分かりやすく分けると、「教育関係者ならキャンプインストラクター」「キャンプ場勤務ならオートキャンプ指導者」といったイメージで捉えると良いでしょう。ただし、どちらもキャンプ未経験者への指導を目的としている点は共通しています。
資格の取得方法と講習内容
キャンプインストラクターの資格を取得するには、各協会が主催する「養成講習会」を受講し、最終日の試験に合格する必要があります。
講習会は、理論と実技で構成されています。受講方法は、オンライン形式と、キャンプ場などで実施される1泊2日の対面形式があり、自分のスケジュールや住んでいる地域に合わせて選ぶことができます。
日本キャンプ協会の公式サイトでは、全国の都道府県協会が開催する講習会の日程を確認し、申し込むことが可能です。
オンライン講習の体験談
オンライン講習は、遠方に住んでいる方や、宿泊講習の日程調整が難しい方に対応しています。
例えば、理論と実技を合わせて計20時間のカリキュラムを、Zoomを使用して実施する形式があります。90分の講義を8日間に分け、約1ヶ月かけて受講するスケジュールなどが組まれています。
理論ではキャンプの歴史、基礎知識、団体での野外活動の方法、安全教育について学びます。実技では、ロープワークやナイフワーク、キャンプでできる料理の実践(例:チャパティ作り)などが行われます。
実技講習に必要な道具の準備も指示されますが、多くはキャンプ経験者なら持っているものや、100円ショップで揃えられるものが中心です。キャンプ用のナイフがない場合は、果物ナイフなどで代用することも可能です。
講習会ではグループミーティングで自身のキャンプ経験やギアを紹介する機会もあり、受講者同士の交流も図られます。
また、各回の講習後には講義内容に関する課題提出があり、これが講習会出席の条件となるため、必ず提出する必要があります。
キャンプ経験がまったくない方のために、「自分キャンプ」という別料金のオプションが用意されている場合もあり、キャンプ場のスタッフからサポートを受けながら実際にキャンプを体験することもできます。
1泊2日の実技講習レポート
対面講習は、都道府県協会ごとに指定されたキャンプ場や少年自然の家などで、1泊2日の合宿形式で行われるのが一般的です。
山梨県や埼玉県の講習会レポートによると、参加者の経歴は様々で、若い会社員、学生、キャンプ関連の経営者、定年後にキャンプ場開設を考えている方など、多様な人々が「キャンプを深く学びたい」という共通の意欲を持って集まります。
講習会は、参加者同士の緊張をほぐすための「アイスブレイク」から始まることが多いです。まず「キャンプネーム」というニックネームを決め、お互いをそれで呼び合うようにします。
その後、名前を覚えるためのゲームやスキンシップを取り入れた活動(ジャンケンゲーム、フリスビーなど)を行い、和気あいあいとした雰囲気の中で講習がスタートします。
講習内容は実技がメインです。グループワークで、ロープワーク、テント・タープ設営、薪割り、火おこし、野外炊事など、キャンプで頻繁に行う作業について、講師から改めて専門的な指導を受けられます。
特に野外炊事では、定番のカレー作りや、災害時にも役立つビニール袋を使った炊飯方法(アイラップなどを使用)を学ぶなど、実践的なスキルを習得します。
また、普段のキャンプではあまり行わないような活動に触れられるのも特徴です。例えば、ネイチャーゲーム(森のエビフライ探しなど)、キャンプファイヤーの進行方法、室内での創作活動(紐を使った人形作り)、さらにはラフティング体験(埼玉県の例)などがカリキュラムに組まれていることもあります。
これらの体験を通じて、参加者からは「自分のキャンプがワンパターンであることに気づかされた」「キャンプ指導者としての立ち回りを学べた」といった声も聞かれ、キャンプの新たな可能性を発見する機会となっています。
取得にかかる費用はいくら
資格取得にためらいを感じる理由の一つが、費用面です。
キャンプインストラクター資格の取得には、受講料とインストラクター登録申請料(テキスト代含む)がかかります。
合計費用は、受講する都道府県協会によって多少異なりますが、概ね3万円前後が目安となります。
例えば、埼玉県キャンプ協会の例(2023年)では、受講料が18,000円、インストラクター登録申請料が15,300円で、合計33,300円です。
他の例では、受講料が東京で20,000円、石川県で12,000円など、地域によって差があります。
オンライン講習の場合も、テキスト代を含めて3万円程度(2022年)とされています。
この金額は、新しいキャンプギアが購入できるほどの額になるため、知識や経験への自己投資として価値を見出せるかどうかが、取得を判断する上でのポイントになります。
試験の難易度と内容

養成講習会の最後には、筆記試験が実施されます。
試験内容は、講習会で使用したテキストや、座学・実技で学んだことから出題されます。
埼玉県の例では、試験は全50問の50点満点で、合格ラインは60%以上(30問正解)とされています。
講習中、講師から「ここは試験に出るから要注意」といった形でヒントがもらえることも多いようです。そのため、テキストを熟読し、講義を真面目に受けていれば、試験自体の難易度は決して高くありません。
オンライン講習の場合は、全ての講義と課題提出を終えると、試験問題と解答用紙が自宅に郵送されます。これに解答し、事務局に返送する形式で試験が行われます。
合格率はどのくらい
合格率について、日本キャンプ協会などから公式な発表はありません。
しかし、複数の講習会体験談によれば、合格率は非常に高いと推測されます。
オンライン講習の体験談では「しっかり講習会を受講し課題提出しておけば100%合格できると思う」と述べられています。
また、埼玉県の対面講習レポートでも「参加者全員が無事合格できた」と報告されており、山梨県のレポートでも合格証書授与式の様子が伝えられています。
講習会の目的は、知識をふるい落とすことではなく、安全なキャンプを指導できる人材を育成することにあるため、講習内容をきちんと習得していれば、合格は難しくないと言えるでしょう。
キャンプインストラクターはいらない人の特徴

- 資格取得のメリットとデメリット
- 資格維持に必要な年会費
- 資格の具体的な活かし方
- キャンプインストラクターの仕事
- キャンプインストラクターはいらない?
資格取得のメリットとデメリット
キャンプインストラクターの資格は、取得することによる明確なメリットとデメリットが存在します。これらを比較検討することが、資格が自分にとって「いる」か「いらない」かを判断する鍵となります。
資格取得のメリット
資格取得のメリットとして、まずキャンプの知識を深く体系的に学べる点が挙げられます。
10年以上のキャンプ経験者であっても、「講習会で知らなかった知識やスキルがたくさんあった」と語るように、キャンプの歴史、安全教育、リスクアセスメント、団体指導の方法など、独学では得にくい専門知識を習得できます。
また、資格保有者という立場から、自信を持って友人や子どもたちを引率できるようになることも大きなメリットです。
そして、一般キャンパーが見落としがちですが、最も実用的なメリットの一つが、日本キャンプ協会の個人会員になることで得られる会員特典です。
特に重要なのが「指導者賠償責任保険」が自動付帯される点です。これは、万が一キャンプの指導中に事故を起こしてしまい、指導上の賠償責任を問われた場合に、その費用が補償される保険です(対人1名5000万円限度など、補償内容の詳細は日本キャンプ協会の規定によります)。
その他にも、会員は以下のような特典を利用できます。
- 補償が大きく割安な傷害保険(キャンプ保険・デイプログラム保険)の利用
- ユースホステル団体パス(通常5,000円)の無料発行
- 会報誌『CAMPING』(年4回)による最新情報の取得
- 会員限定のオンライン交流・学習事業「キャンプカンファレンス」への無料参加
- 提携企業(パタゴニア、K&Kクリエーションズなど)での割引
こうした実践的なサポートが受けられる点は、大きな魅力と言えます。
資格取得のデメリット
一方で、資格取得のデメリットは、やはり費用面にあります。
前述の通り、初期費用として約3万円がかかります。
さらに、資格を維持するためには、年会費や更新料が毎年発生します。
また、各都道府県協会の所属会員となるため、協会によってはキャンプイベント等への参加を要請される可能性もゼロではありません(ただし、これは交流を望む人にとってはメリットにもなります)。
一般的なキャンパーにとっては、講習内容や会員特典が「指導者」向けに特化しているため、コンテンツに物足りなさを感じる可能性もあります。
資格維持に必要な年会費

資格取得のデメリットでも触れた通り、資格を維持するためには年会費(または更新料)が毎年かかります。
このランニングコストが、「キャンプインストラクターはいらない」と言われる大きな理由の一つになっています。
年会費の金額は協会によって異なります。
キャンプインストラクター(日本キャンプ協会)の場合は、年間6,100円(2022年現在)または年間6,000円(埼玉県の例)とされています。
また、公認オートキャンプ指導者(日本オートキャンプ協会)の場合は、年間7,500円(2022年現在)とされています。
毎年この経費を支払い続けることを負担に感じるかもしれません。
しかし、この年会費を単なるコストとして見るか、「指導者賠償責任保険」の保険料や各種会員特典(ユースホステルパスなど)の対価として妥当と考えるかで、資格の価値は大きく変わってきます。
資格の具体的な活かし方
資格の活かし方は、指導者としての活動がメインとなります。
講習会には学校教育関係者やキャンプ場関係者が多く参加していることからも分かるように、教育現場やレジャー施設での活用が想定されています。
具体的には、以下のような場面で知識とスキルが役立ちます。
- 子ども会やボーイスカウトなどでのキャンプ指導
- 学校行事での野外活動の引率
- ファミリーキャンプやグループキャンプにおけるリーダー役
- 安全管理やリスクアセスメントに基づいた計画立案
また、キャンプだけでなく、登山などのアウトドアアクティビティ全般に広く活用できる安全知識も含まれています。
趣味の範囲であっても、友人や家族を「ゲスト」として安全にキャンプへ連れていく際には、この資格で得た知識が非常に役立つでしょう。
キャンプインストラクターの仕事
キャンプインストラクターの資格は、医師や弁護士のような「業務独占資格」ではありません。つまり、資格がなければキャンプ関連の仕事ができない、というわけではありません。
しかし、キャンプを仕事にしたいと考える場合、この資格は大きな助けとなります。
キャンプ場スタッフ、自然学校の指導員、アウトドア用品店の専門スタッフとして就職する際、または自身でキャンプ教室を開業する際に、体系的な知識と技術を習得していることの証明となり、顧客や雇用主からの信頼感が高まります。
講習会の参加者の中には、キャンプ関連会社の経営者や、将来的にキャンプ場の開設を考えている人も含まれており、プロフェッショナルな活動を目指す上での一つのステップとして認識されています。
資格が直接仕事を保証するものではありませんが、指導者としてのスキルを可視化し、活動の幅を広げるための有効なツールとなると言えます。
キャンプインストラクターはいらない?

あらためて、「キャンプインストラクターはいらない」のでしょうか。
その答えは「あなたの目的によります」となります。
キャンプインストラクターはいらない(不要である)可能性が高いのは、以下のような方です。
- ソロキャンプや、気心の知れた身内(家族・友人)とのキャンプが中心の方
- 他人を指導・引率する予定が全くない方
- 初期費用(約3万円)や年会費(約6,000円)を負担に感じる方
一方で、以下のような目的を持つ方にとっては、取得する価値が十分にあると考えられます。
- 子どもたちやキャンプ未経験者を指導・引率する機会がある方
- グループキャンプなどでリーダー役を担うことが多い方
- 安全管理やリスクアセスメントの知識を体系的に学び直したい方
- 指導中の万が一の事故に備え、「指導者賠償責任保険」に魅力を感じる方
- 将来的にキャンプ関連の仕事や副業、ボランティア活動を考えている方
- 同じ趣味を持つ多様な人々(講師陣や他の受講者)との人脈を広げたい方
キャンプは、自然の中で行う以上、天候急変やケガ、事故などの危険と常に隣り合わせです。資格取得のプロセスを通じて、そうしたリスクに対する専門知識を深く学ぶことは、自分自身だけでなく、大切な家族や仲間を守ることにもつながります。
資格がなくてもキャンプはできます。しかし、誰かを安全に、そして楽しくキャンプ(アウトドア)に連れていくためのスキルを学びたいと考えるなら、この資格は強力な選択肢となるでしょう。
キャンプインストラクターの資格取得には費用や年会費というデメリットが確かに存在します。しかし、それ以上に「知識の習得」「賠償責任保険」「人との交流」といったメリットがあります。
ご自身のキャンプスタイルと照らし合わせ、本当に必要かどうかを判断してみてください。
キャンプインストラクターに関するよくある質問

この記事の内容を補完するため、キャンプインストラクターに関する潜在的な疑問にお答えします。
Q1. キャンプインストラクターは国家資格ですか?
いいえ、キャンプインストラクターは国家資格ではありません。
公益社団法人日本キャンプ協会が認定する民間資格です。同様に、日本オートキャンプ協会が認定する「公認オートキャンプ指導者」も民間資格です。
Q2. 資格なしでキャンプを教えてもいいですか?
はい、資格なしで友人や家族にキャンプを教えること自体は、法律などで禁止されているわけではありません。
ただし、十分な知識がないまま指導を行うと、ケガや事故につながるリスクが高まります。また、万が一の事故の際に「指導者賠償責任保険」などの補償がないため、すべて自己責任となります。安全に指導するための知識を学ぶという意味で、資格が役立ちます。
Q3. 独学でキャンプスキルを学ぶこととの違いは何ですか?
独学でキャンプスキルを磨くことも素晴らしいことですが、知識が断片的になったり、個人の経験則に偏ったりする可能性もあります。
資格講習では、キャンプの歴史、教育的意義、子どもの心理、リスクアセスメント、安全教育といった「なぜそうするのか」という理論的な背景を体系的に学びます。また、ロープワークやテント設営、火おこしといった技術も、「指導する」という視点で改めて専門家から習得できる点が、独学との大きな違いです。

